https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/fe3d393a4730ec1857f3b9b7adc51c43
より転載します。
カザフスタンでのプロの暴動を受けて、ロシアと旧ソ連諸国の安全保障体制であるCSTOが平和維持軍を出して、暴動は治まり、カザフスタンには憲法秩序が戻った、とトカエフ大統領が言っている。
それを受けて、CSTOはあと2日ぐらいで段階的に撤退するそうだ。
Kazakhstan reveals departure of Russian-led forces
誰なんだ、ロシア軍は一生駐留するのだと自信を持って書きまくってた奴は、といった展開ですね。
しかもそんなことが書かれたtwitterに日本人が大量に「いいね」を押してるのを見た。70年も米軍に駐留されていることが日常化しているからこうなんだろうなぁと、笑う気にもなれないほど呆れた。
あと、1945年の満州では、ソ連軍が巨大な作戦で日本軍の最強部隊を追い出し、1か月ぐらいかかると思ってた作戦がほぼ1週間かそこらで目鼻がつき、2か月ぐらいで戦闘部門は帰っちゃったじゃんか、というのも思い出したい。
中国とロシアは必ず割れるはずだ、対立するはずだ、という希望的観測をする人たちはこの1945年の状況を思い出した方がいい。
中国とロシアは大枠で協同することが可能で、そして、他のどこよりも大きな共通項がある。それは、このアメリカ覇権なるものを作る過程で起こった世界戦争の展開の中で、最大の犠牲者を出した集団だということ。
対して、西側の人間は戦争や大量破壊を楽しみにしている心性を宿している。そうでなかったら、イラクやシリアでの大量の人殺しにもっと心を砕くことでしょう。
■ ロシア軍の仕上がり
で、今回の平和維持軍派兵は、短いけど、しかしながら巨大なインパクトがありました。
まず、ロシア軍の展開の速さ、能力がしっかり表れた。西側メディアでは、西側名物のパチモノ評論家が、ロシアは二正面作戦になるから大変ですとかいう馬鹿なことを言いふらしてみたり、あれもできないはず、これもできないはずと言いふらしていましたが、違ってました。ロシア軍の輸送能力、運用能力、規律が示された。
お楽しみとしては、IL-76が並んでる姿が見られてうれしい、という向きもあるでしょう(私か?)。
Прибытие самолетов военно-транспортной авиации на аэродром Алматы
NATOは東方に拡大する、永遠に拡大する、止めない、というのが米国およびヨーロッパの意思らしく、今般もブリンケンが、止めない、止めないと言ってますね。それはつまりいずれはロシアの国境を越えようというまるまるの侵略意図を表明していることになる。
先人に続くのですね!
だが他方で、現状、NATOは張り子のトラなどと言われてもいる。ロシア人からではなく、アメリカ人やイギリスから・・・。ですので、張り子のトラが張り子の狂い猫になっていないか、考えてみたらいいのではないでしょうか。
■ CSTOの一角としてのカザフスタン
2番目は、これでカザフスタン軍および治安機関は、誰が味方なのかがはっきりした。味方はまずCSTO諸国であり、それで足らなかったら上海協力機構がいる。
CSTOの公式ページにこの2人のブリーフィングの動画が出てる。
左が、カザフスタンの防衛副大臣のSultan Gamaletdinov 中将、右がロシア軍空挺司令官のセルジュコフ大将。
これまでのところは、カザフスタンは、なにぜ創業者のナザルバエフが、ベラルーシのルカシェンコなんかの旧ソ連共産党のおじさんたちと同様、西でも東でもありませんみたいな、いうところの「マルチ・ベクター」外交路線を取っていて、ふらふらしてた。
面白く思うのは、完全に西側になるのだ、とは誰も言い出していないこと。どうしてこうなるのかというと、実のところ、ソ連の中の一般人は別にソ連を解体してアメリカの子分になりたいと熱望したりしたことはないから、ロシアと戦争する組みに入れられることを全然熱望していない。
誰もがポーランドやバルト3国並みに狂ってるわけではない。
畢竟、ソ連解体とはソビエトの共産党内の内部分裂と裏切りによってもたらされたようなものだから、その首謀者たちは、一般の人々を裏切ってるわけではないですよ、という表面を作っておく必要があった。
そこでふらふらしていたわけだけど、その間、EU、日本、アメリカといった西側勢は中央アジアを勝手に自分の裏庭扱いして、反ロシアにもっていこうとあれやこれやと画策していた。文化プログラムから学校の手配、NGOでの就職、果ては軍同士の友好的な交流とかいってアメと軍事演習してみたり、etc.
それで安定秩序を作ってくれるなら住民も話を聞いたかもしれないけど、結局、2014年のウクライナを見ればわかる通り、そうは問屋が卸さなかった。
中央アジアの場合は、イスラム過激派問題があるから、事情はさらに複雑。
ということで、旧ソ連内の各国の治安機関は、何から何を守るのかわからない体制になっていたといえるかもしれない。それが今回ではっきりした。
思うに、元ソ連の構成要素だった中央アジアの多くの一般人は安心していると思う。今回も警察、カザフスタンの新しい政府の呼びかけにみんなで協力してたという。そもそも、カザフスタンは今でもロシア語の使用率が過半数を超えているところなわけですよ。ってことは、ウクライナやシリアで起こったことも手に取るようにわかったわけでしょ。ということは、取るべき道がどちらなのかは多くの人にとってはっきりしていたんじゃなかろうか。ナチ協力者の子弟一族とか、トルコ主義者の一族の人はまた別だろうけど。
■ 中国&ロシア
そして、今回、登場はしていないものの、誰しも存在を感じないわけにはいかなかったのは中国。
中国メディアも習近平主席も、カザフスタンの大統領の迅速な収束の仕方を褒めていた。
日経が記事の中に、「カラー革命」という語を入れ、アホな解説をしているのが非常に興味深かった。これこれ。
習氏は、トカエフ氏が「重要なタイミングで思い切って強い措置を取り、迅速に事態を収拾した」と評価。「中国は、外部勢力がカザフでカラー革命(旧ソ連諸国で相次いだ政権交代の総称)を起こすことに断固反対する」と述べた。
「兄弟のような隣国として、できる限り支援を提供したい」とも強調した。中国外務省の汪文斌副報道局長は7日の記者会見で、中国とロシアが主導する上海協力機構(SCO)の枠組みも活用してカザフを支援する意向を示した。
カラー革命が「旧ソ連諸国で相次いだ政権交代の総称」というのは、日経の独自見解だろうか(笑)。まぁ、革命の主力が西側だという点を抜けば、確かに場所はそうだね。あはははは。
で、そんな馬鹿話はどうでもよくて、位置関係からみてカザフスタンは中国の隣国なので熱烈な関心を持つに決まってる。しかも、今回騒ぎが大きくて目についたアルマトイは、南の端のキルギスタン寄りのところなので、中国が気にならないわけもない。展開如何では、人民解放軍が直接支援しても別に驚かないですよ、隣国の騒乱なんだから。
ただ、多分、中国は(彼らの意識として)後ろ側のムスリムがドミナントな地域に兵を入れたくない・・・。ムスリム地域の対中感情は歴史的に良好ではないから。
カザフスタン西部などは特にそうだと思う。清朝時代にロシア帝国側に逃げた人たちがいることで知られている。
ということなので、中国にとっては、ロシアが安定統治してくれる方がずっとお得だな、と思ってるでしょう。ようやく気付いたって感じではある。おせーんだよ、って話ですが。でも、他者である私たちは、自分たちに都合がよくなるまでゴネて話をぶち壊す傾向が多大にある、というのは中国のキャラの1つだ、と学習すればいいのでは。
■ 今後
こうしたことを受けて次に何が起こるのか。
多分、中央アジアというかソ連のアジア部分というかに対する、セキュリティー・アーキテクチャの提案、みたいなのが来るんじゃなかろうか。
今回のカザフスタンの暴動を受けて、CSTO諸国が固まって会議をしていたが、その中のプーチン、ルカシェンコの発言などを見て、そんな気がした。
こういうカラー革命は初めてでもなければ、これで最後でもない、とか、カザフスタンで起こったことは本質的に同国に対する攻撃だ(青部分)、と総括してる。これは、だったら、対応する、という意味だと思うな。
Actively used were ‘Maidan’ technologies of armed and information support for the protests. There were organised and controlled groups of fighters, as President Tokayev has pointed out just now, including people who had apparently received training in terrorist camps abroad, and their attack on Kazakhstan, as President Tokayev has noted – and it was essentially an attack on the country, on Kazakhstan – amounts to an act of aggression. I fully agree with him in this regard.
具体的には、CSTOに入っていないウズベキスタン、トルクメニスタンをこれ以上ぷらぷらさせておかない、ということではなかろうか。
でもって、無駄に反対したら、じゃあ言わせてもらおうか、が来るんじゃないのか。
上の紫の部分、カザフスタンを攻撃した人々の中には、「外国のテロリスト・キャンプで訓練を受けた人たち」が含まれる、と言ってる。
このキャンプはどこか。多くの人が直ちに思うのは、トルコ。その他中東諸国もまんべんなくあるけど、ムジャヒディーン時代以来一貫して、テロリストの製造にあたってるのはトルコなわけです。要するに、NATOあるいはUSが普通にやっている業務だ、とさえいえるでしょう。
実際、世界の覇権国だと聞く米国の大統領が公式に大変なお喜びでムジャヒディーンさんをお迎えしていたわけですから、驚くにはあたらない。
何度も書いてますが、2014年、テロリストは傭兵なんだよ、あんたら知らないの、と西側のジャーナリスト相手に語ったのはプーチン。
■ テロリストは傭兵なんだよ by プーチンから2.5年
で、これらのテロリストだの過激派だのには資金提供者がいる、彼らは要するに傭兵なんだぜ、とパブリックに初めて言い出した政治家は実にプーチン。
西側のジャーナリストの問いに答える過程で、あんたらね、という感じで話しを開陳しはじめ、各戦闘員にいくら払われているかも知ってるぜ、とか、傭兵を雇うには金がかかる、しかし戦いをやめさせるにはもっと金がかかる、あんたらどう考えるんだね、と疑問を向けた。
テロリストは傭兵なんだよ by プーチンから2.5年
このインパクトを西側社会は受け止めることができないで、結局7年経ちましたって感じですね。その間、話を逸らしたり、インチキ言ったりという状況が横行したおかげで、西側諸国全体がおかしくなった。どこにも冷静なリーダー層が出る気配がない。
■ オマケ
NATOとロシアの会談の話を見てて思うのは、アメリカの政治家、行政官、各種のポリティカル・サイエンティスト、ロシア研究者なるシンクタンクの作業員たちの馬鹿さ加減は底なしだなというところ。
ロシアは、アメリカが何を言っても拒否してくるだろうことを読んで仕事してるわけですよ。つまり、では次に何をしようかを考えてる。ということは、アメリカの、「永久東方侵略」宣言は、ロシアにとって、ほうら見なさい、この人たちはこんな人という見せ方の恰好の登場人物になってる
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