今は昔であるが、僕が高校生だった50年前、福島県では高校生の冬山、雪山登山は禁止されていた。僕の高校は山岳部としては毎年の山岳部門のインターハイにほぼ必ず出場する「名門校」だった。しかし、隠れて、付近の900メートルクラスの冬山に出かける先輩は居たが、あくまでもその程度であった。
だから、大学山岳部に入って、はじめて雪山、冬山を経験したのである。
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今回の那須雪崩事件では、スキー場とは言え活動内容は冬山実地訓練である。
疑問は3つ。
1.なぜ春山登山訓練なのか。
2.スキー場とは言え、誰も行かない急斜面で、
3.しかも雪崩注意報発令中に実施したのか。
雪山、冬山を前提にしなければ春山訓練、特にラッセル訓練など意味がない。
25歳で世界7大陸最高峰登頂に成功した野口健氏の記録を破る人材でも育てたいのだろうか。
野口氏だって、そのスタートは亜細亜大学に入学してからのことである。
もっとも、彼を追い越すには高校時代からの訓練が必要かもしれないが…。
次に誰も行かない急斜面の下でのラッセル訓練。
冬山をやる大学山岳部ならだれでも知っていることだが、樹木のない大斜面は常に雪崩の危険がある。実際の山であれば、斜面を横切る行為はスキーであれ徒歩であれ、最大の注意と周辺の観察が必要になる。
スキーや徒歩の一筋のシュプールが雪崩を起こすことは常識である。
まして、集団ラッセルで斜面の下部を切り落とすなんて・・・・・
山を知る人は決してしない行為である。
シュプールだけで起きる可能性のある雪崩なのに、ご丁寧に斜面下部をラッセル訓練でえぐり取り、自ら雪崩を誘発している。
きっと、ギャーとか、ウッホーとか素っ頓狂な大声を上げながらの「訓練」だったことだろう。
こだまの振動も雪崩を呼ぶ。
畳みかけるような雪崩呼び込みであった。
そういう意味では、当の引率教師たちは全員ずぶの素人であったと断定できる。
気象庁の雪崩注意報はどんな時に発令されるのか。
そして雪崩に対する注意とは、ただ漠然と注意するだけでよいのか。
そもそも何を注意すべきなのか。
何が目的の訓練だったのか知らないが、
雪崩注意報発令中に、
十分に親切が降り積もり、
雪崩の起きやすい樹木のない急斜面をワザワザ選び、
雪崩が起きやすい透かし掘りを施し、
大声で雪崩を呼び込む・・・・・・
あぁ、引率者には何も明確に理解されていなかった。
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亡くなった方々のご家族の皆様には、深く哀悼の意をささげます。
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