2020年11月30日月曜日

バイデンの愚策ーーー田中ニュースより転載

 田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)20201130

http://tanakanews.com/


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 バイデンの愚策

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米大統領選挙はマスコミ権威筋がバイデン勝利を断定し、トランプも「選挙人団

投票でバイデンが勝つなら自分は大統領府を去る」と表明し、バイデンは組閣な

ど政権開始の準備に入っている。この話でまず書いておかねばならないのは、マ

スコミ権威筋の断定と裏腹に、まだトランプが勝つ可能性がかなりあることだ。

これまで何度か書いたように、1214に全米各州で行われる選挙人団投票・選

挙人集会で、いくつかの接戦州で民主党と共和党の選挙人集会が重複して挙行さ

れて当選者が二重に決められ、どちらが勝ったことにするかが、16前後にワ

シントンDCで行われる連邦議会の両院合同会議に委ねられ、最終的に上院議長

を兼務するペンス副大統領がトランプ勝利を決めるというシナリオがありうる。


http://www.zerohedge.com/political/trump-says-he-will-leave-white-house-if-biden-wins-electoral-college-despite-rigged

Trump Now Says Biden Will Have To 'Prove' His 80 Million Votes Weren't Fraudulent Before Giving Up White House


http://tanakanews.com/201107election.htm

トランプ再選への裏街道


トランプが「選挙人団投票でバイデンが勝ったら自分は辞める」と言った意味は、

負けを認め始めたのでなく、選挙人団投票で自分が勝って続投することになると

いう表明とも受け取れる。トランプ陣営から接戦各州の共和党支部への、バイデ

ン勝利を認めず強硬姿勢を貫けという要請が成功したのかどうかがカギだ。要請

や工作は水面下で行われ、もう結論は出ているだろう。最近のトランプからは

自信が感じ取れるので、各州の共和党への工作は成功したのでないかと私は感じ

ている。私の読みとしては「バイデン政権」は実現せず終わる可能性がけっこう

ある。実現しないとしたら、バイデンの組閣人事や予測される政策の内容を分析

するのは意味がない。しかし、バイデンは「米国は再び世界を率いる。そのため

の政権を作る」と宣言しており、実現しないとしても、バイデンがどうやって

「世界を再び率いる」のか、同盟諸国や露中などを納得させて覇権を再建する

つもりなのか興味が湧く。


http://news.antiwar.com/2020/11/24/joe-biden-america-is-back-and-ready-to-lead-the-world/

Joe Biden: ‘America Is Back’ And ‘Ready To Lead The World’


その観点でバイデン政権への閣僚人事を見てみた。国務長官にアンソニー・ブリ

ンケン・ブリンケン、国防長官にミッシェル・フロノイ、気候変動問題の特使に

ジョン・ケリーなどが報じられている。これらの人事、とくに国務長官と国防長

官の人選を見ると、バイデン政権は、かつて共和党のブッシュ政権がやって大失

敗が見事に確定した「単独覇権主義」や「先制攻撃による政権転覆」の戦略を再

び引っ張り出してきて実行することで「米国が世界を率いる」覇権体制を復活さ

せようとしていることが見て取れる。これは、あまりに愚策だ。それで今回の記

事の題名は「バイデンの愚策」になった。


http://www.politico.com/news/2020/11/25/michele-flournoy-biden-defense-secretary-440803

Flournoy gets progressive boost in Biden's search for Pentagon chief


http://www.russiamatters.org/analysis/antony-blinken-russia

Antony Blinken on Russia


トランプ政権のこれまでの4年間で、中東から欧州、南アジア、アフリカなどの

地域で、米国は覇権・影響力を大幅に低下させ、代わりにロシアと中国が影響力

を拡大し、事態はすっかり多極化している。今後、バイデン政権がこれらの地域

における米国の覇権を取り戻そうとする場合、単独覇権戦略を振り回してしまう

と、すでにこれらの地域を隠然支配する影響力を持っているロシアや中国との敵

対を扇動するばかりとなり、以前よりかなり国際信用や財政力が落ちている米国

は、ほとんど影響力を取り戻せず、ロシアや中国から覇権を奪還できずに終わる。

ロシアや中国と本格的な核戦争をするつもりなら別だが、バイデンら米国の軍産

エスタブは、露中と直接本格的な戦争をするつもりはない(核戦争になって人類

滅亡になる)。


http://www.zerohedge.com/markets/joe-biden-return-cfr

Joe Biden: Return Of The CFR


米国が世界各地で失った覇権や国際信用を取り戻そうと思ったら、まずロシアや

中国を敵視することをやめて、いったん多極型の新世界秩序を認めるしかない。

ロシアも中国も、米英に比べると「覇権の独り占め」に対する固執が少ないので、

米国が覇権運営に再び力を入れてくれるのは歓迎だ(露中と米国が派遣を奪い合

っているという世界観は、米英のマスコミ権威筋が作ってきたウソのプロパガン

ダだ)。露中は、米国が露中を敵視するのをやめてくれるなら、見返りに、トラ

ンプの米国が捨てた覇権を拾って自分たちのものにした分の一部を米国に返還す

るだろう。トランプが捨てた覇権をバイデンが回収したいなら、すでに失敗が確

定して久しい露中敵視の単独覇権主義の復活でなく、露中への敵視戦略をいった

ん捨てるしかない。


http://nationalinterest.org/print/blog/politics/marco-rubio-no-fan-joe-biden%E2%80%99s-foreign-policy-team-173269

Marco Rubio Is No Fan Of Joe Biden’s Foreign Policy Team


国務長官に指名される予定のブリンケンと、国防長官に指名されると予測されて

いるフロノイは、オバマやクリントンの時代から国防総省などの高官を歴任して

外交安保策を立案してきたが、いずれも単独覇権主義への傾注が強い。とくにフ

ロノイは、国防総省の政策担当次官補代理だった1996年に単独覇権主義や敵性国

の政権転覆策を盛り込んだ世界戦略を立案した「元祖」だ。この時に立案した戦

略は、5年後の911事件とともにブッシュ政権の主要な戦略として採用されたが、

イラク戦争やアフガニスタン占領、リビア転覆、シリア内戦などの失敗の連続に

よって、愚策であることが確定して終わっている。フロノイはシンクタンクの

要員などとして、その後もあきらめずに単独覇権戦略を発表し続けてきた。単独

覇権主義者の元祖である頑固な彼女が国防長官になったら、すでに失敗が確定し

ているのを無視して、強硬な単独覇権戦略をやるだろう。その方向で成功する見

込みは全くない。


http://thegrayzone.com/2020/11/20/biden-advisors-flournoy-blinken-permanent-war/

Top Biden advisors Flournoy and Blinken promise smarter, more secretive permanent war policy


ブリンケンはフロノイよりも政策に陰影がありそうで、裏でロシアと取引して米

国が覇権を回復する演技に協力してもらうといったやり方をとれるかもしれない。

オバマがやった手口だ。ブリンケンはオバマの外交戦略を立案していた。しかし、

この手の裏表のあるやり方は、米国の国際信用を回復する策として効率が悪い。


http://www.politico.eu/article/nine-things-to-think-about-antony-blinken/

9 things to know about Antony Blinken, the next US secretary of state


バイデン陣営は、トランプが撤退傾向を続けてきたシリアへの米軍駐留を再増加

してシリア内戦での米国の巻き返しを目指している。だが、シリアはすでにロシ

アとイランに支援されたアサド政権が、米軍傀儡のISアルカイダの民兵団(テ

ロリスト組織)を殺害投降させて内戦を終わらせ、国家の再建に取り掛かってい

る。ここで米軍を再び増派しても、できることは少ない。米軍が直接に露イラン

・アサドの軍隊と交戦することはない。やれば国際法違反の侵略戦争になる。米

軍はISカイダを支援して露イランアサド側と戦わせるだけだ。しかし、すでに

露イランアサドはISカイダを打ち負かし、残党を後始末係のトルコの傘下地域

に追いやっている。露イランアサドが完全掌握している内戦後のシリアで、米軍

がISカイダを再建することはほとんど不可能だ。不成功になるだけでなく、そ

ういった国際法違反の汚いことを続けるバイデンの米国は国際信用を失うばかり

だ。シリア政府軍が化学兵器を使ったというOPCWがばらまいたウソもばれつ

つある。


http://tanakanews.com/180418syria.htm

シリア政府は内戦で化学兵器を全く使っていない?


http://tanakanews.com/180915syria.php

シリア内戦 最後の濡れ衣攻撃


バイデン政権は、トランプが進めてきたアフガニスタンからの米軍撤退も逆回し

して米軍を再増派するかもしれない。だがこれも全くうまくいかないだろう。ア

フガニスタンの最強勢力は、反米の民兵団タリバンだ。アフガン駐留米軍は、タ

リバンと直接交戦したくないので、米傀儡アフガン政府の傘下に政府軍を作らせ

て軍事訓練してきた。しかし国軍は、米傀儡なのでとても弱い。タリバンは、米

軍の撤退が完了したら政府軍を打ち負かして首都カブールを奪還し、傀儡政府を

潰してタリバン政権を復活しようと準備して待っている。そこに米国がバイデン

政権になって米軍撤退を中止して再増派したらどうなるか。米軍は、犠牲が大量

に出るのでタリバンと直接交戦したくない。米軍はアフガン政府軍を再テコ入れ

しようとするだろうが、いったん米軍撤退が決まっていたのを逆流させるのは無

理があり、テコ入れは失敗するだろう。トランプは、タリバンと和解して米軍を

撤退させてきたが、バイデンはタリバンと敵対した挙句に失敗し、ベトナム戦争

型の敗戦になる。馬鹿げている。


http://www.zerohedge.com/geopolitical/pentagon-has-closed-ten-us-bases-afghanistan-amid-hastened-draw-down

The Pentagon Has Closed Ten Bases In Afghanistan Amid Hastened Draw Down


http://tanakanews.com/190708eurasia.htm

ユーラシアの非米化


オバマ政権の副大統領だったバイデンは、オバマがとっていた戦略を受け継ぐと

思われがちだが、オバマはバイデンのような馬鹿げた戦略はとっていなかった。

オバマは、ブッシュ時代からの単独覇権主義が愚策なのでやめようとした。イラ

クから撤兵して占領の泥沼からの離脱を目指し、イランと核協定を結んで濡れ衣

に基づくイラン敵視策を終わりにしようとした。ビンラディンを殺したことにし

てテロ戦争を終わらせようとした。だが軍産(米諜報界)はオバマを妨害するた

め、イラクでISを決起させてオバマが米軍を再派兵せざるを得ない状態に持ち

込んだ。軍産は、ISカイダをこっそり支援してシリアで内戦を起こし、オバマ

を中東派兵の泥沼に沈めようとした。これに対してオバマは、シリア内戦の軍事

的な平定をロシアに丸投げし、ロシアとイランがアサドのシリア政府を軍事支援

してISカイダを退治して内戦を終わらせる今に続く道筋を作った。各方面で失

敗していたブッシュ以来の単独覇権戦略からの離脱するのがオバマの戦略だった

(後続のトランプに比べると成功しなかったが)。


http://tanakanews.com/160323obama.htm

軍産複合体と闘うオバマ


オバマは米中枢における軍産支配を終わらせようとしたが、バイデンは正反対に、

軍産支配を積極的に受け入れている。この違いはもしかすると、米国の選挙不正

の手法(投票機を裏口からハッキング操作し、偽造した郵送投票を紛れ込ませる

手口)を握っているのが軍産・諜報界で、彼らはバイデンが軍産傘下の単独覇権

主義者たちを新政権の高官に就任させることを条件に、バイデンに勝たせてやる

と持ちかけて談合したところから来ているのかもしれない。オバマは自らの人気

を使い、軍産の手を借りずに当選・再選できたので、軍産支配からの離脱を試み

られたのでないか。証拠はないが。


http://www.ronpaulinstitute.org/archives/featured-articles/2020/november/18/biden-s-deep-state/

Biden's Deep State


http://tanakanews.com/151221syria.htm

シリアをロシアに任せる米国


クリントン政権の末期から、軍産は米国の政権を支配して単独覇権主義をやらせ

てきたが、それはすでに米国の覇権を自滅させることが確定しており、軍産の目

標である米国覇権の永続とは正反対の結果になることがわかっている。それなの

に軍産は、自滅的な単独覇権主義をまたやろうとしている。馬鹿である。その意

味で、愚鈍なのはバイデンでなく、バイデンを背後から動かしている軍産である。

愚策と知りつつ自滅策を米政権にやらせるのは隠れ多極主義の手法だ。軍産は実

のところ、隠れ多極主義に支配されている。トランプは、覇権を放棄する隠れ多

極主義を自ら意図してやっている。バイデンは、過激な方法で覇権を取り戻そう

として失敗して覇権喪失を加速する隠れ多極主義を、たぶん知らずにやらされて

いる。道筋が違うだけで、結果は同じだ。


http://www.zerohedge.com/geopolitical/bidens-national-security-pick-said-us-should-encourage-chinas-rise-not-contain-it

Biden's National Security Pick Said US Should "Encourage" China's Rise & Not Contain It


http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2020/11/antony-blinken-secretary-of-state-biden-transition-foreign.html

Biden’s new secretary of state ready to take on the Middle East


バイデンは、中国包囲網を続けると言っている。日本や韓国に対し、中国敵視の

姿勢をとらせようとしている。バイデンは日本の菅首相と電話会談し、尖閣諸島

に中国が攻めてきたら、米兵に戦死者が出るリスクおかしても、米軍を派兵して

中国と戦わせると菅に伝えた。日米が協力して中国と戦う感じが醸成された。と

ころが菅の日本はその直後、中国と打ち合わせ、中国から王毅外相に訪日しても

らい、日中で尖閣諸島の紛争を解決していく方向性を決めてしまった。


http://original.antiwar.com/?p=2012341405

Should Americans Die For The Senkaku Islands? Joe Biden Says Yes.


http://news.antiwar.com/2020/11/24/japan-and-china-agree-to-coordinate-on-east-china-sea/

Japan And China Agree To Coordinate On East China Sea


米国は経済面でも、日本などの同盟諸国が中国と疎遠な関係になることを望んで

いるが、菅の日本は、中国がTPPに入りたいというのを喜んで受け入れている。

日中韓3か国の自由貿易圏を作る交渉まで始めている。日本は、米国を裏切って

中国と仲良くする道をどんどん進んでいる。米国の次期政権がバイデンとトラン

プのどちらになっても、日本はもう米国の傘下に安住するつもりがない。日本が

まだ対米従属の国是だと思っている人が多いかもしれないが、自国に対するその

見方はすでに間違っている。トランプは日本に対米従属をやめてもらいたいと前

から言っているので、トランプが続投するなら日米の思惑は合致している。バイ

デンは逆に、同盟諸国との関係を最強化して米覇権体制を再建したいと言ってい

る。これは全くうまくいかない。日本はすでに米国に見切りをつけている。


http://thediplomat.com/2020/11/after-rceps-launch-the-us-urgently-needs-to-rejoin-the-tpp/

After RCEP’s Launch, the US Urgently Needs to Rejoin the TPP


http://www.zerohedge.com/markets/escobar-flying-dragon-crashing-eagle

Escobar: Flying Dragon, Crashing Eagle


その他、バイデンが採ると言っている戦略が、実は自滅的であることを示す事例

として、2国式のパレスチナ和平、ロシア敵視の巻き直しによるNATOの再建、

地球温暖化問題・人為説の蒸し返しなどがある。今回は書ききれないので、これ

らはいずれ改めて分析する。また、バイデンは民主党左派の政策をほとんど入れ

ずに新政権を作る方向で、左派はバイデンや軍産に出し抜かれ、用済みにされて

いる。この事態が何をもたらすかも、今後見極めて書いていく。


http://www.timesofisrael.com/biden-tells-jordans-king-he-is-eager-to-support-a-two-state-solution/

Biden tells Jordan’s king he is eager to ‘support a two-state solution’


http://www.defensenews.com/congress/2020/11/24/no-secdef-pick-from-biden-as-flournoy-hits-resistance-from-progressives/

No SecDef pick from Biden as Flournoy hits resistance from progressives




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http://tanakanews.com/201130biden.php

2020年11月25日水曜日

米大統領選とコロナの行方—-田中宇の国際ニュース解説 会員版より

 田中宇の国際ニュース解説 会員版(田中宇プラス)2020年11月23日

http://tanakanews.com/

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★米大統領選とコロナの行方
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マスコミだけを見るていると、米国の大統領選挙後の混乱は、民主党が開票時に
広範な偽造票の紛れ込ませなどをやってバイデンを不正に勝たせたとトランプ陣
営が言っているものの根拠がなく、トランプはしだいに不利になっている。これ
まで共和党寄りだと言われてきたFOXやWSJがトランプを批判するようにも
なっている。バイデンが勝つと、共和党もトランプ支持勢力を追い出してブッシ
ュ時代からの中道派・軍産系が復活しうる。FOXやWSJはそこに期待して、
トランプを捨てて批判するようになったようだ。マスコミはもともと軍産の傘下だ。

http://www.wsj.com/articles/georgia-certifies-donald-trump-lost-11605915757
Georgia Certifies: Donald Trump Lost

http://www.scoopyweb.com/2020/11/tucker-on-latest-sidney-powell-claims.html
Tucker On Latest Sidney Powell Claims: WH, Trump Lawyers Haven’t Seen Any Evidence Backing Up Claims

トランプ陣営は勝敗を覆すため、接戦州に再開票を申請し、実行してきた。だが、
どの州でも再開票は選挙結果をほとんど変えていない。偽造票は正式な票と見分
けがつかないので再開票は不正を暴けない。米国では昔から再開票は結果をほと
んど変えない。見方を変えると、米国は足がつかない「完全犯罪」の選挙不正を
やれる。投票機(タブレットPC)は多くの場合、紙の記録が残らない。投票機
や郵送投票などという、不正の温床になりやすい選挙制度を使い続けているのは
先進諸国の中で米国だけだ。米国の支配層(覇権運営勢力、軍産)は、選挙不正
をやりやすいままにして、都合が悪い候補者を誹謗中傷など他の策略で落とせな
い場合、選挙不正で落としてきた。トランプはその一人なのだろう。

トランプ陣営は、11月3日の投票締め切り後に到着した郵送票を有効にしたペン
シルバニア州(PA)の決定を無効にする裁判も起こした。だがこれも無効にさ
れる郵送票は多くなく、選挙結果を覆せない。これらの結果は事前に予測できた。
これらの票をいじる方法は時間稼ぎのためだろう。トランプ陣営が時間をかけて
裏でやっているのは、民主党が不正を行ったとおぼしき各地の接戦州で、地元の
共和党勢力が「民主党が選挙不正をやって選挙結果をねじ曲げた。今回の選挙は
認められない。本当はトランプが勝った」と宣言するよう説得することだ。接戦
各州から、トランプとバイデンの両方の当選証書が連邦議会に届く流れを作り、
来年1月6日の両院合同会議で、米憲法の修正12条にのっとった手続きとして、
上院議長を兼務するペンス副大統領がトランプ側の当選証書を正当とみなし、
トランプ当選を実現するのがトランプ陣営の目論見だ。

http://tanakanews.com/201107election.htm
トランプ再選への裏街道

とはいえ、この戦略にも暗雲が立ち込めている。先日、接戦の末にトランプが負
けたことになっているミシガンの州議会の共和党の重鎮2人がトランプに呼ばれ
てワシントンDCの大統領府に行った。トランプは2人に、ミシガン州議会の共
和党として「民主党が選挙不正をやって選挙結果をねじ曲げた」と宣言してくれ
と頼んだようだ。だが2人はトランプの依頼を断った。大統領府から出てきた
2人は、待っていたマスコミ陣に対し「ミシガンの選挙結果は正しいものであり、
このままで良い」と述べた。トランプは説得に失敗したと喧伝された。今後、他
の接戦州も同様の展開になると、トランプが最重視する修正12条を利用した勝敗
転覆策も失敗してしまう。WSJを含む米マスコミは、トランプの策略が失敗す
るシナリオを喜々として描き始めている。万事休す。トランプ敗北、軍産復権が
見えてきた・・・。

http://www.scoopyweb.com/2020/11/after-meeting-with-trump-michigan.html
After meeting with Trump, Michigan lawmakers say they see nothing to overturn Biden's win

・・・と思ったが、もう少し考えると、疑問が湧いてきた。なぜトランプは、自
分の依頼を断りそうなミシガンの2人をわざわざマスコミが感知する中で大統領
府に呼び、自分を敵視するマスコミが、自分の策略の失敗を大喜びで喧伝する流
れを容認したのか。トランプ陣営は事前にミシガンの共和党の様子を把握してい
たはずだ。トランプは、わざと自分の失敗をマスコミに喧伝させ、民主党と軍産
を油断させようとしたのでないか。他の接戦諸州でのトランプ陣営による地元共
和党への説得がどうなっているか、ほとんど見えない。実はけっこううまくいっ
ているのに、悪い情報だけ浮上するように仕向け、もうトランプはダメだと敵方
に思わせておいて、あとでどんどん返しすることがあり得る。

・・・いやいや、本当にトランプは失敗しているのかもしれない。各州の共和党
の中には軍産系の人も多く、彼らはトランプが負けて共和党がトランプ傘下から
軍産傘下に戻る方がうれしい。共和党の軍産系は、民主党の選挙不正にむしろ協
力する。状況の全体像はまだわからない。12月の半ばぐらいまでに、各州の共和
党が「公式」な選挙結果を無視する形で選挙人会議を開くかどうか見ものだ。

どんでん返しでトランプが勝つと、これまでの4年間のような状況が続く。他方、
バイデンの民主党政権ができても、それだけでは今後の新たな米国の権力機構が
確定しない。民主党内は、バイデンらの中道派(軍産)と、ハリス副大統領や
AOC(オカシオコルテス下院議員)らの左派にわかれ、権力の奪い合いを続け
ている。マスコミがバイデンの当選を決めた後、左派の突き上げが強くなった。
バイデンら中道派が、党内の左派を排除・弱体化させられれば、共和党内の中道
派に手を差し伸べて軍産主導型の従来の2大政党制を復活し、民主党の左派と、
共和党の右派・旧トランプ派はいずれも外されて在野的な勢力に戻される。左派
と右派は場外乱闘を続けるかもしれないが、それは在野なので大したことない。

http://www.wsj.com/articles/thank-you-for-voting-and-get-out-11605740873
Thank You for Voting and Get Out

米国覇権の蘇生を望むドイツなど対米従属の同盟諸国は、このシナリオになるこ
とを渇望している。ドイツの上層部は、バイデンの勝利を前提に、ドイツが以前
より多めに覇権(国際安保)の一部を担当するので、米独が協力して中露に対抗
したい、と表明した。ドイツは経済的に中国への依存が大きく、本気で中国を敵
視できない。ドイツの「米独で中露に対抗」の提案は、米国の気を引くための演
技にすぎない。ドイツ(与党CDU)は、いまだに対米従属を至上のものとみな
している。

http://www.bloomberg.com/opinion/articles/2020-10-28/biden-or-trump-germany-is-ready-to-offer-the-u-s-a-new-deal
Germany Is Ready to Offer America a New Deal

http://apnews.com/article/joe-biden-heiko-maas-elections-berlin-germany-caaae483ae7813315cb551948f106294
Germany seeks ‘new deal’ with US under Biden

そもそも、上に書いたようなきれいな軍産復権が実現する可能性は高くない。バ
イデンが勝つ場合、負けたトランプの支持者たちのほとんど(8割)は、民主党
が選挙不正したと確定的に考えているので、民主党を憎み続ける。民主党内で、
共和党側からの喧嘩を受けて立つのは好戦的な左派だ。民主党左派の中からは
「第2次大戦後、日独の人々を再洗脳して(対米従属に)転換させたように、
全米7500万人のトランプ支持者たちを再洗脳して敵性を低下させるのが良い」と
いう計画が出てきている。たしかに、上記のドイツの例に見るように、日独の人々
への再洗脳は大成功している。だが、トランプ支持者への再洗脳は成功するのか?。
そもそも「再洗脳計画」を明言してしまっている時点で、それを聞いたトランプ
支持者をますます怒らせ、左派と右派の対立を激化させることにしかならない。

http://www.zerohedge.com/political/leftists-suggest-re-education-camps-firing-squads-banning-talk-radio-deprogram-75-million
Leftists Suggest "Re-Education Camps", "Firing Squads", & Banning Talk Radio To "Deprogram" 75 Million Trump Supporters

民主党左派は、共和党右派ともっと激しく敵対し合いたい。そうすることで、民
主党と共和党の中道派どうしが仲良くすることを妨げ、2大政党の両方が過激派
に乗っ取られ、中道派や軍産、そして米国覇権の蘇生を妨害できる。敵対を協調
に変えるのは大変だが、協調を敵対に変えるのは簡単だ。民主党の左派は、党内
でも、共和党に対しても、喧嘩を売って敵対を強め、2大政党制や軍産や覇権維
持といった従来の米国の体制を破壊しようとしている(左派は多極主義勢力の別
働隊だ)。創造は大変だが破壊は簡単だ。左派は強い。

同様のことはコロナ対策でも起きている。左派はコロナ対策の都市閉鎖を強烈に
やりたいが、中道派は経済成長を重視し、強烈なコロナ対策に消極的だ。左派は、
都市閉鎖をやりすぎて経済が悪化してもかまわない(資本主義が崩壊し、UBI
など社会主義的な策をやれるのでむしろ好都合だ)と考える「コロナネオコン」
だ。マスコミも、世界的に「コロナネオコン」の傾向を強めている。マスコミは
左派の味方だ。コロナネオコンは、イラク戦争当時の元祖な「安保ネオコン」と
同様、自分たちの過激な考え方を否定・批判する者を徹底的に非難攻撃中傷する
(コロナネオコンは民主党左派、安保ネオコンは共和党右派という違いはある)。
米国の安保ネオコンは、イラクやアフガニスタンなど中東各地の政権転覆計画を
進めて失敗し続けることで、米国の国際信用を失墜させ、覇権を浪費した。
左翼やマスコミなどの「コロナネオコン」も、超愚策な都市閉鎖を強硬に進めて
長期化し、米欧の経済繁栄を自滅させ、覇権を浪費している。

今後の米国がたどりうるいくつかの道筋のうち、バイデンが大統領になって民主
党内の左派を成敗して弱体化すれば、軍産支配や米国覇権は蘇生しうる。しかし、
それ以外の、民主党政権になるが左派が支配する道筋や、トランプが勝つ道筋に
なると、軍産と米国覇権が壊されていく流れが今後も続く。それは、外交安保と、
コロナや経済、QEや金融といったすべての面の変化になる。

今後、コロナ危機が長期化するほど、都市閉鎖が故意的な超愚策であり、コロナ
の脅威が不正に誇張・扇動されていることに気づく人が多くなる。だが、左翼は
マスコミや権威筋によるコロナ危機の扇動を軽信し、コロナのプロパガンダに絡
め取られている。左翼は、コロナに対して疑問を持った人々を受け入れず、再洗
脳しようとする。疑問を持った人々は、右翼に行くしかない。右翼はすでに欧米
の全体で、都市閉鎖に反対し、コロナ危機への疑問を表明している。トランプも
その一人だ。コロナ危機が長引くほど、欧米各地で右翼のポピュリスト政治家が
人気を集めるようになる。最近、米国のジョンケリー元国務長官、欧州のフィン
ランドの首相といった左系のリベラル政治家が、コロナの長期化による右翼ポピ
ュリストの台頭を警告した。

コロナ危機を起こしている覇権勢力から見ると、コロナを軽信している左翼はす
でに洗脳されて問題なしになっているが、右翼は洗脳を拒否して反抗しているの
で懸念の対象だ。そのため、ダボス会議の事務局が提案する「大リセット」には、
人々の皮膚下に、気持ち・マインドを感知するマイクロチップを埋め込み、洗脳
を拒否している人々を早めに探し出して再洗脳リストに入れる、みたいな感じの
ことが含まれている。この手のものは、本当に実現するためでなく、実現した
場合に被害を受ける人(ここでは右翼ポピュリスト)を怒らせるためのプロパガ
ンダである。米民主党の左翼が流している「7500万人のトランプ支持者を、敗戦
後の日独人みたいに再洗脳しよう」という計画と合わせ、コロナに疑問を持った
人々を怒らせ、欧米社会の混乱と自滅に拍車をかける策略が用意されている。欧
米が自滅するほど、世界は多極化する。それが目的であるように思える。



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http://tanakanews.com/201123corona.php